クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
カサンドラは、護衛の手を借りてゆっくりと立ち上がると、口元に笑みを浮かべ淑女の礼を取った。
「グレーテ様、我がベルツ家へお越し頂き恐縮で御座います。このような体の為、お出迎えも出来ずに申し訳御座いませんでした」
カサンドラはそう言うと、自身の足元に視線を送る。ドレスに遮られ彼女の足の具合を確認する事は出来ないけれど、そこには未だに癒えない傷があるのだろう。
「カサンドラ様、無理をなさらず座ってください」
私の言葉に、カサンドラは一瞬険しい表情を浮かべながらも、直ぐにそれを隠した。
「お気遣いありがとう御座います……そうさせて頂きますわ」
仕方が無いとは言え、この気まずい空気は居たたまれない。早々に立去ろうと機会を探していると、元の椅子に座ったカサンドラが、私を見上げて言った。
「ところでグレーテ様はなぜこちらに?」
「館の中を少し見学させていただいておりました」
「そうですか。何も無いところなのでがっかりされたのではないですか?」
その通りだけれど、まさか本当の事を言える訳もない。
「いえ、そんな事はありませんわ。この館はアンテス城に雰囲気が似ていますね」
「ベルツ家はアンテス家の忠実な家臣ですからその影響を多大に受けているのでしょう。私もベルツ家の娘としてアンテス城へ赴き辺境伯様へお目通り願いたかったのですが、この足ではそれも叶いません」
カサンドラは淡々と言いながら最期にリュシオンに目を向けた。その視線はあまりに冷ややかで、私は無意識に息を飲む。
直ぐに声を出せない私に、カサンドラが続けて言う。
「そう言えばグレーテ様はそこの騎士リュシオンと婚約なさったそうですね」
「え、ええ……」
頷く私を見つめるカサンドラの目がすっと細くなる。
「グレーテ様、我がベルツ家へお越し頂き恐縮で御座います。このような体の為、お出迎えも出来ずに申し訳御座いませんでした」
カサンドラはそう言うと、自身の足元に視線を送る。ドレスに遮られ彼女の足の具合を確認する事は出来ないけれど、そこには未だに癒えない傷があるのだろう。
「カサンドラ様、無理をなさらず座ってください」
私の言葉に、カサンドラは一瞬険しい表情を浮かべながらも、直ぐにそれを隠した。
「お気遣いありがとう御座います……そうさせて頂きますわ」
仕方が無いとは言え、この気まずい空気は居たたまれない。早々に立去ろうと機会を探していると、元の椅子に座ったカサンドラが、私を見上げて言った。
「ところでグレーテ様はなぜこちらに?」
「館の中を少し見学させていただいておりました」
「そうですか。何も無いところなのでがっかりされたのではないですか?」
その通りだけれど、まさか本当の事を言える訳もない。
「いえ、そんな事はありませんわ。この館はアンテス城に雰囲気が似ていますね」
「ベルツ家はアンテス家の忠実な家臣ですからその影響を多大に受けているのでしょう。私もベルツ家の娘としてアンテス城へ赴き辺境伯様へお目通り願いたかったのですが、この足ではそれも叶いません」
カサンドラは淡々と言いながら最期にリュシオンに目を向けた。その視線はあまりに冷ややかで、私は無意識に息を飲む。
直ぐに声を出せない私に、カサンドラが続けて言う。
「そう言えばグレーテ様はそこの騎士リュシオンと婚約なさったそうですね」
「え、ええ……」
頷く私を見つめるカサンドラの目がすっと細くなる。