クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
リュシオンは普段と寸分も変わらない態度で、無駄口はたたかない。
立場を弁えた人だ。身分が下の者として、私から言葉がかかるのを待っているのかもしれない。
でも、そうなるとますます困ってしまう。
姉のように、普段からリュシオンと親しくしていたら気安く会話を始める事が出来たかもしれないけれど、あいにく私は深くリュシオンと関わった事がない。
次期当主の兄や、アンテス家長女であり、フェルザー公爵の婚約者の立場だった姉は我が家にとって重要人物で、対外的にも狙われやすい身だったから、最も優秀な騎士リュシオンが護衛に付く事が多かった。
でも私は立場的にふたりほど重要人物ではなく危険も少ない。
その為、リュシオン自らに護衛をして貰った事がなかったのだ。
私はリュシオンの秘密を知っているのに、多くの人が知っていそうな些細な事を知らない。会話のきっかけが掴めない程に。
その事実に気付き、軽いショックを受けていると、リュシオンが心配そうな視線を向けて来た。
「グレーテ様。顔色が良くないようですが、気分が優れないのですか?」
「あっ、いえ、大丈夫、この通り元気です」
私は慌てて笑顔をつくり否定する。あれこれ考えていたから険しい顔になってしまい、具合が悪そうに見えてしまったのかもしれない。
それにしても“グレーテ様”と言う呼び方に、私とリュシオンの間の大きな距離を感じてしまう。
やはり私は、彼にとって主君の娘でしかない。
リュシオンは私より地位が上の姉の事を“ラウラ姫”と呼んでいたのだ。もし私に親しみを感じているのなら、“グレーテ姫”と呼んでくれるはず。
本当は婚約者として“グレーテ”と呼び捨てて欲しいくらいだけれど、それが叶う気配は今のところ無い。
早速突きつけられた現実の厳しさを噛み締めていると、気付けばリュシオンがお茶を涼し気な硝子の器に注ぎ、私の前に置いていた。
……そのお茶は、私が入れようと用意していたものなのに
リュシオンにやらせて自分はぼんやりと座っ たままなんて、傲慢に思われたかもしれない。
立場を弁えた人だ。身分が下の者として、私から言葉がかかるのを待っているのかもしれない。
でも、そうなるとますます困ってしまう。
姉のように、普段からリュシオンと親しくしていたら気安く会話を始める事が出来たかもしれないけれど、あいにく私は深くリュシオンと関わった事がない。
次期当主の兄や、アンテス家長女であり、フェルザー公爵の婚約者の立場だった姉は我が家にとって重要人物で、対外的にも狙われやすい身だったから、最も優秀な騎士リュシオンが護衛に付く事が多かった。
でも私は立場的にふたりほど重要人物ではなく危険も少ない。
その為、リュシオン自らに護衛をして貰った事がなかったのだ。
私はリュシオンの秘密を知っているのに、多くの人が知っていそうな些細な事を知らない。会話のきっかけが掴めない程に。
その事実に気付き、軽いショックを受けていると、リュシオンが心配そうな視線を向けて来た。
「グレーテ様。顔色が良くないようですが、気分が優れないのですか?」
「あっ、いえ、大丈夫、この通り元気です」
私は慌てて笑顔をつくり否定する。あれこれ考えていたから険しい顔になってしまい、具合が悪そうに見えてしまったのかもしれない。
それにしても“グレーテ様”と言う呼び方に、私とリュシオンの間の大きな距離を感じてしまう。
やはり私は、彼にとって主君の娘でしかない。
リュシオンは私より地位が上の姉の事を“ラウラ姫”と呼んでいたのだ。もし私に親しみを感じているのなら、“グレーテ姫”と呼んでくれるはず。
本当は婚約者として“グレーテ”と呼び捨てて欲しいくらいだけれど、それが叶う気配は今のところ無い。
早速突きつけられた現実の厳しさを噛み締めていると、気付けばリュシオンがお茶を涼し気な硝子の器に注ぎ、私の前に置いていた。
……そのお茶は、私が入れようと用意していたものなのに
リュシオンにやらせて自分はぼんやりと座っ たままなんて、傲慢に思われたかもしれない。