クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
「ありがとう」
気を取り直して礼を言い、リュシオンの入れてくれたお茶を飲んだ。とても美味しい。
慣れた手つきだったし、普段から自分でお茶を入れるのだろうか。
そんな事を考えながら、私は硝子の茶器をテーブルに置いた。
この状況では私から話を切り出さないと進まないと判断し口を開く。
「リュシオン、婚約の事をお父様から聞きました」
早速本題に入った私の言葉に、リュシオンが今日初めて少し緊張した様子を見せた。
「お父様はリュシオンも承知していると言っていましたが、本当に良いのですか?」
私がリュシオンにまず聞きたかった事だ。
この婚約はリュシオンが本当に納得した事なのか。
お父様が無理矢理押し付けた事ではないのか。
もしリュシオンが断れずに嫌々私と結婚しようとしているのなら、私はこの結婚を断ろうと思う。
その場合は私は他の誰かと婚約する事になるだろうけど、リュシオンに疎まれる妻になるよりはましだと思うから。
私の問いかけに、リュシオンは淀みなく答えた。
「この上ない光栄だと思っております」
その答えに私は少し失望した。
模範的な回答はリュシオンの本心だと思えなかったからだ。
でも仕方無い。
リュシオンにとって私は主家の娘で、拒否出来る訳がないのだから。それでも私は念を押すように問うた。
「リュシオンには想う女性がいるのではないですか?」
「そのような相手はいませんが、何か気になる事があるのですか?」
リュシオンが訝しそうな表情になる。