【短】告白

何時の間にか、メールや電話を頻繁にするようになった間柄。
でも…と、私の何処かが警報を鳴らす。

このまま、このままって、いつまでこんな関係でいるつもりなんだろう。
彼にだって、好きな人や彼女にしたい人がいるだろうに…。
そう言えば、そういった類の話を彼の口からも、他の誰かが話しているのも聞いた事がなかった。

…私は益々このままじゃいけないんじゃないかと思うようになってしまった。


家のベッドに身を沈めると、あの人の事で未だに満杯になる。
あの人が私に残していった傷痕が…どんなに拭っても、拭い切れずに苦しんでいた。


『爽香ちゃん、俺、今度教授のお嬢さんと付き合うよ。…多分ね、そのまま結婚すると思う。だから、今までみたいな恋人ごっこは出来ないんだ』


精一杯背伸びをして強がっていたあの時。
彼の衝撃的な言葉に、子供のように、

「行かないで」

なんて言えずに、可愛げもなく…。

「あぁ…そうなんだ」

とだけ呟いた。

彼は、ただ「年下の彼女」を一時的に求めていただけで、自分の私利私欲の為だけに、先方からの申し出をなんの躊躇もなく、受け入れそのまま承諾をした。

私が初めて本気で好きになった人。

何もかも、全て…彼から与えられるものは私にとって真新しいものばかりで…。

私の全てに、彼という存在が余すことなく刻まれてた。

だから…。


正直…最初は、ただの気まぐれで、私の反応を見たくて、そんなことを言っているんだと思ってた。
 
だけど、暫くして…とても嬉しそうに、

「彼女にプロポーズしたんだ。年も近いし、趣味も合うし、素敵な人なんだよ?」

なんてわざわざ追い討ちを掛けるかのように電話をしてきて。
私の大好きな声で、他のヒトの話なんかして欲しくなかった。

でも、やっぱり嫌われてしまうことの方が怖くて…。
我儘なんて言えなかった。


「捨てないで」

なんて言えなかった。
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