捨てられた町
僕はムッとして言い返した。


僕は鈍感だとよく言われるけれど、いくらなんでもこの場面を崩すほどの鈍感さを持っているワケじゃない。


「それでは……」


ひとしきり見た目と香りを楽しんだミミがニンジンチップスを口に運ぶ。


それはまるでスローモーションのようだった。


ミミの丸っこい手に持たれたニンジンチップスが2本の突き出た前歯に触れ、シャクッと音が鳴る。
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