捨てられた町
カエルの言葉に窓へと視線を移動させると、確かに雨は止み、明かりが差し込んできていた。


僕はカエルを床に置いて窓へ近づいて庭を見た。


昨日の傘はどこかへ行ってしまっているが、傘が飛び跳ねた跡とカエルが飛び跳ねた跡が無数に残っていた。


その中に耳の足跡を探す。


ぬいぐるみの丸い足跡は簡単に雨で流れてしまうのか、どこにも見当たらない。


「何をそんなに真剣に見ているんだ?」


カエルに言われて僕は「別に」と窓から視線を外した。


ミミがどうなっていようと、僕には関係のないことだ。


僕とミミとの接点が愛菜であっても、そんなこと……。
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