捨てられた町
そう声をかけながらも、祖父の家にはよく小動物が出入りしていたことを思い出した。


屋根裏から音がすると思って確認してみると大きな蛇がいたこともある。


思い出すと背筋がゾクリと寒くなった。


僕の声に返答がないまま1分ほど過ぎた時、カエルが飛び跳ねながら表に出て来た。


そして軒下へ向けて「出て来い」と、声をかける。


やっぱりなにかが入り込んでいたんだ!


咄嗟に身構えた次の瞬間、軒下から出て来たのは真っ黒に汚れたミミだったのだ。


当初のピンク色は土色にかわり、大きな耳は水分を含んでダラリと垂れ下がっている。


全身が水膨れしたようにパンパンに膨らんでいるのもわかった。
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