捨てられた町
『ルキって言ってね、勉強もスポーツもとてもよくできる男の子がいるの』


僕の事を話す愛菜はいつも頬を染めて、照れくさそうにしていた。


そして、愛菜の服に微かについていた僕の匂いを、ミミは一瞬にして思い出した。


愛菜が好きだった人がこの町にいる。


そう知ったミミはじっとしてなんていられなかった。


持ち主に通じる人間のそばにいたい。


持ち主が好きだった人間のそばにいたい。


そう思い、ここまで来たらしい。


僕はその話を聞きながら微かな吐き気を覚えていた。
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