捨てられた町
きっとそうだ。


そうに決まっている。


僕が暮らす街には山はあるけれど、そこで遊んだ事なんて今まで1度もない。


そんな僕が自分から山に入るなんて事、絶対にあり得ないんだ。


だからこれは夢で間違いない。


たのむから早く目が覚めてくれ!


そんな願いが通じる事もなく、大きな影が僕に覆いかぶさってくるのが見えた。


ハッと息を飲みこんで勢いよく振り返ると、そこには見たこともない化け物が立っていた。


薄汚れた毛布に冷蔵庫や洗濯機がくっついて両足のようなものになり、壊れた本棚や雑誌が両手となって伸びている。


その顔はブラウン管テレビでできていて、砂嵐のザーッと言う音が聞こえてきていた。


僕は目を見開き、同時に口も開きその得体の知れないものを見上げた。
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