捨てられた町
風呂に入ると白い毛が数本浮かんでいて、それがミミのものだとすぐに理解できた。


真っ黒になっていたから風呂を貸してやったようだ。


僕は手のひらにお湯を共に毛を浮かべて、排水溝へと流した。


きっともう二度と会う事はないだろう。


愛菜が持っていたぬいぐるみと僕の縁なんて、そんなに深いものではないのだから。


僕は簡単に体と髪を洗って風呂を出た。


途端に足元に仁王立ちをしているカエルがいたので、踏んづけてしまいそうになった。


「危ないだろ、なんでこんなところにいるんだよ」
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