捨てられた町
そう思うのに、昔好きだった人の事を悪く言うのは、やっぱり僕自身も苦しいことだった。


「そうやって自分の気持ちにした目を向けないから、ずっと孤独なんだ」


カエルが冷静な口調でそう言った。


僕の心臓が一瞬止まりそうになるのがわかった。


「お前に僕のなにがわかるんだよ」


自分の声が震えている。


指先も小刻みに震えていて、悲しみと怒りの混ざり合った複雑な感情が生まれるのを感じる。


下手をすればカエルの事を殴ってしまうかもしれない。
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