捨てられた町
物でできた怪物は両手を広げ襲い掛かってきそうな体勢を取っている。


そんな状態なのに僕は逃げる事もできずにその場に立ち尽くしていた。


足が少しも動かない。


恐怖で喉に声が張り付いていて少しも音が出てこない。


雑誌でできた手が伸びて来る。


「ナ……ナカマ……」


砂嵐の音に混ざってそんな声が聞こえて来る。


高く、女性のアナウンサーのような声だ。


「僕は仲間なんかじゃない‼」


ようやく悲鳴に近い声が出た。


同時に弾かれたように走り出していた。
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