捨てられた町
本たちは店内を走り回ったり、店主の傘にじゃれ付いたりして遊んでいる。


「本棚はこいつらの寝床なんだ。キチンと収納されている本たちは今眠っているから、起こさないようにしてくれよ」


傘がそう言ったので、僕は本棚をマジマジと見つめた。


そう言えばさっきから誰かの寝息が聞こえてくると思っていたが、これは本の寝息だったようだ。


「ところでさ、どうして本が駄菓子を売って、傘が本を売ってるわけ?」


僕はカエルへ向けて小声でそう質問をした。
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