捨てられた町
本棚で眠っていた本たちが驚いて起きだし、棚から落下する。


本たちを起こすなと言ったのは誰だったのか。


そう思っていると、一番奥の本棚から大慌てて走って来る一冊の本が見えた。


途中でこけそうになりながら傘の元まで走ってくると、シャンッと背筋を伸ばして立った。


その拍子には【お笑い魂】と書いてある。


随分埃がかぶっているけれど、間違いなく僕が探していた本だった。


「お呼びですか!?」


本は緊張した声でそう言うと、傘を見上げた。
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