捨てられた町
「この本であってるか?」


傘にそう聞かれて、僕は何度も頷いた。


さっきの大声がまだ耳の中で反響している。


「おいお前、こいつがお前をほしがってるぞ」


傘が【お笑い魂】へ向けてそう言った。


【お笑い魂】が僕へと視線を移動させてくる。


僕と視線がぶつかった瞬間、【お笑い魂】が息を飲んだのがわかった。


「あ、あなたは……」


「え、なに? 僕に見覚えがあるの?」


「い、いえ。別に……」


【お笑い魂】はサッと視線をそらせてそう言った。
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