捨てられた町
そう呟いてみると、予想よりもはるかに情けない自分の声が聞こえて来た。


なにも覚えていないのだから、これから先どうすればいいのかもわからない。


僕は混乱したまま自分の服装を見おろしてみた。


いつものジーパンにいつもの白いTシャツ。


Tシャツの中央にはよくわからない英語が書かれていて、母親がバーゲンで買って来てきてくれ、部屋着として使っていたものだとわかった。


ここにきてようやく見覚えのあるものに出会えってホッと安堵のため息を吐き出し、僕は期待を胸にジーンズのポケットに手を入れた。
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