捨てられた町
カエルの言葉に僕は本を見た。


本は僕から視線を外す。


どうやら図星みたいだ。


「本は僕に引き寄せられたはずなのに、どうして持ち主の名前を言えないんだよ?」


ムッとして強い口調になってそう言ってみても、本はなにも返事をしてくれなかった。


「そんな風に聞いてもダメだ。本はルキの事を怯えている。もっと優しくしないと」


「そんな事言われても……」


だいたい、僕は本を怖がらせるような事はしてない。


どうして怯えているのかもわからないんだ。


「あら、あなたイケメンねぇ。どこのなんていう本なの?」
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