捨てられた町
すると、さっきまで無言のままだった本が僕の腕からするりと抜けだした。


「あ!」


と、叫んで捕まえようとしたが、本は逃げるつもりはないらしく、その場でカエルとのコントが始まったのだ。


「俺の事は忘れろと言っただろう」


本が低く渋い声でカエルに言う。


カエルは切ない表情を作り、「そんなことできない!」と、返した。


そのやり取り見ながらプッと噴き出してしまう僕。


2人とも渾身の演技をしていてそれだけでも十分に面白いのに、そこにプロのコントネタが加わって更に面白さが加速していた。
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