捨てられた町
「あたしよりもあの女を取るのね……」


ついにカエルが本から身を離した。


あれ?


と、僕は思う。


あのコントネタのラストは『やっぱりお前の事がすっきゃねぇん!』と言って終わるはずだ。


そのセリフが当時の流行語大賞にもノミネートされていたから、間違いない。


そう思っていると、途端に本が動きを止めてカエルを見た。


「なんで、ミサの事をしってる?」


本がぽつりとつぶやいた。


ミサ……?


「こいつの持ち主はミサという名前らしいな。聞き覚えはあるか?」
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