捨てられた町
自分の役目は終わったとでもいうようにカエルは元の声に戻ってそう聞いて来た。


「え? あ、うん……」


僕は何度も頷いた。


ミサは僕のクラスメートの女子の名前だ。


大高ミサ。


ショートカットの陽気で元気な女の子。


思い出して胸の奥がモヤモヤとしてくるのを感じた。


「え? お前、ミサが持ち主だったのか?」


僕がそう聞くと、本がビクリと身を震わせた。


さっきまで饒舌にコントを繰り広げていたのに、また無言になってしまった。


「ここは【捨てられた町】だ。捨てられた物の魂が生前に覚えのある匂いを元にルキに寄って来る」
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