捨てられた町
本と2人で家に戻ると、玄関先に青色の傘が立っていた。


「何か用事?」


後ろからそう声をかけると傘はくるりと振り向いて「雨の形をしたキラキラ光る物を探しているの」と、言った。


またか。


そう思って心の中でため息を吐き出す。


「悪いけど、そんなものはこの家にはないよ。勘違いじゃないかな?」


「そうなのかしら? あたし、確かに見たと思うんだけど……」


「それなら、その雨の形をしたキラキラしたものがあれば、君のために取って置いてあげるよ。それでいい?」


そう聞くと、傘はパッと晴れやかな笑顔を浮かべた。
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