捨てられた町
「それだけじゃなくて、保育所の問題とか、出産後の社会復帰の問題とか、まぁ色々あるみたいだよ」


深く聞かれると説明することができなくて、僕は『色々』という言葉で誤魔化した。


「そうか。そっちの町は大変そうだな」


カエルはそう言い、一軒家の前で立ちどまった。


僕も同じように立ち止まり、その家を見上げる。


さっきから見ている昔ながらの一軒家と何も代わりないけれど、どこかで見たことがある気がして僕は目を凝らした。


灰色の瓦に、クリーム色の壁。


大きな庭を取り囲むようにしてブロック塀が立っている。
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