捨てられた町
本が聞く。


ネックレスは無言のまま左右に首をふってそれを否定した。


「そうでないなら、どうしてこの家に?」


後方からカエルの声が聞こえて来て僕たちは振り向いた。



丁度風呂からあがって、ホコホコと湯気が立っているカエルがそこにいた。


茹でカエルだ。


ネックレスはカエルの質問に答えず、相変わらず傘に怯えた表情を浮かべている。


「なぁ、ちょっと、いったん離してやらないか」
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