捨てられた町
「ち、違うよ! 僕はネックレスの事なんてしらない!!」


慌ててそう言うが、傘に僕の言葉は届いていないようで、ジロリと睨まれてしまった。


これじゃまるで僕が悪者みたいじゃないか。


知らない物が僕に集まって来る。


それはつまり、物が僕の匂いを辿ってここまで来たということだ。


僕はすぐにネックレスへ視線をうつした。


『お前の持ち主は?』


そう聞こうとして口を開いた瞬間だった。


「お前の匂いを知ってる」


本が突然そう言ったのだ。


「私も、あなたの匂いを知っています」


ネックレスが答える。


「え……?」
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