捨てられた町
そのブロック塀に近づいた時僕は「あ‼」と、声を上げた。


足元のブロックの1つに【ルキ】という文字が掘られているのを見つけ、しゃがみ込んだ。


石で掘ったそれはまるでつい最近掘られたように綺麗なままだ。


「ここって……」


「井上正樹の家だ」


カエルが言った。


僕は目を見開く。


「やっぱり‼」


どこかで見たことのある家だと思ったが、ここは僕の祖父の家だったのだ。


足元のブロックに掘られた【ルキ】という文字は、僕は小学校2年生の時に自分で掘ったものだ。
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