捨てられた町
中には何も入っていない。


めげずに後のポケットも探す。


が、やっぱり何も入っていなかった。


「おかしいな、いつもジーンズのポケットにスマホを入れているのに……」


今日に限ってどこかへ忘れて来てしまったようだ。


ここまでたどり着いた経緯もわからないし、これから自分が何をしようとしていたのかも思い出せない。


おまけに連絡手段もないときた。


僕はさっきとは真逆の落胆のため息を漏らした。


深い深いため息に、自分自身が闇へと沈んで行ってしまいそうな感覚になる。
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