捨てられた町
僕はたまらず、カエルの体を抱きしめた。


プラスチックのツルリとした感触がある。


「またすぐに会いに来るよ。夢の中でこの町に来ることができるんだろ? だったら、すぐに会えるじゃないか」


僕はそう言いながらも、あれは優しい嘘だったのだと気が付いていた。


【捨てられた町】の住人は嘘をつくことができない。


それを、みんなで忘れていたようだ。


僕はカエルの体を離して立ちあがった。


ここにいると自分の気持ちが揺らいでしまいそうだ。
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