捨てられた町
僕は恐る恐る洞窟の中へと足を踏み入れた。


途端にヒヤリとした冷たい空気が体に絡み付いて来て身震いをした。


「この中、すごく寒いですね……」


そう言う自分の息が白くなって消えて行く。


そういえば、マヤの手もこの洞窟の中のように冷たかったな。


まるでここだけ別世界みたいだ。


手を伸ばせばすぐそばに現実世界があるのに、取り残されている。


「この寒さで目が覚めるかもしれないわね?」


「そうなら、いいですね」


言いながら体がどんどん重たくなってくるのを感じた。
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