捨てられた町
「うわっ⁉」


茂みの中から現れた何かを確認する暇もなく、僕は尻餅をついてしまっていた。


幸い、僕の周りにも草が生い茂っているため、痛みは軽減された。


「ルキ。迎えに来たぞ」


低く渋い声が聞こえて来て僕は上半身を起こした。


周囲を見回すが、相変わらず何もない丘が続いているだけで人の姿はない。


「幻聴か……?」


小さな声で呟いた。


今、僕の名前を呼ばれた気がしたけれど……。


「幻聴じゃない。こっちだ」
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