捨てられた町
でもそれじゃやっぱりリアルタイムで今の日本を知る事はできないと言う事だ。


「あのさぁ。これって夢の世界じゃないんだよな?」


「まだそんな事を言ってるのか」


「いや、もう大分現実だって受け止めはじめてるけど……。お前は僕が持ってたカエルなんだろ?」


そう聞くと、カエルは僕を見た。


今度は自然を離さない。


僕は少し緊張して姿勢を正した。


「僕が寝る前に握りしめていたカエルのストラップ。昨日、思い出したんだ」


「……そうか」


カエルはニッと口角を上げて笑った。


「ルキが思っている通り、俺はストラップだ。壊れる前に本と一緒に捨てられて、この町に来た」
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