捨てられた町
柔らかくてとても冷たいマヤの手を握りしめると、マヤは驚いたように僕を見た。


「何をするの!?」


マヤが僕の手を振り払おうとする。


が、それは全然力が入っていなくて、僕はマヤの手を掴んだままになっていた。


「僕はマヤを助けたくてここまで来たんだ」


「私を助ける? 私は助けられる必要なんてない!」


マヤの声は怒りがこもっているように聞こえたが、僕の手はまだ握られたままだ。
マヤは本気で振りほどく事ができずにいるのだ。


それはマヤの昔の記憶。


人に飼われていた頃の懐かしい、幸せな記憶がそうさせているんじゃないだろうか。
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