捨てられた町
「僕はカエルから聞いたんだ。人と一緒に過ごす時間はとても幸せなものだって。

だけどマヤはそれを失い、捨てられて、ここに来た」


「そうだよ。だから私は人間を憎んでる。お前みたいにこの町に迷い込んだ魂を食べてるのさ」


マヤは僕を見て真っ赤な舌を出して見せた。


その先端は2つに分かれている、蛇の舌だ。


「だけど本当は覚えてるんだろ? 人間と過ごした温もりを」


僕はそう言い、残っている方の手をマヤへ差し出した。


マヤは警戒して後ずさりをしようとするが、僕に手を握られていて動くことができなかった。
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