捨てられた町
僕は伸ばした手でマヤの腰辺りに触れた。


驚くほどに細いその腰を勇気を出して引き寄せる。


マヤの体が僕の目の前に来て、僕は両手でマヤを抱きしめた。


女の人をこんな風に抱きしめるなんて生まれて初めての事で、心臓がうるさいくらい早く打ち始める。


けれど僕はマヤをきつく抱きしめた。


マヤは何も言わない。


マヤの息遣いだけが僕の耳まで届いてくる。


「この温もりを、マヤは覚えてる?」


そう聞くと、マヤが微かに頷くのがわかった。
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