捨てられた町
「悪いな。こいつ少々ボーっとした性格なんだ。ルキ、初めて会った人には挨拶くらいしろ」


カエルが僕の足をつついてそう言った。


「あ、えっと……始めまして、井上ルキです」


で、いいのかな?


本に挨拶をしたことなんてないから、どうすればいいのかわからない。


「おう。俺は料理本の本だ。よろしく」


本はそう言い、手を伸ばして来た。


その手は大きな丸っこい指が3本しかなくて、触れてみるとぬいぐるみのようにフカフカしていた。
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