Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[前編]完
目の前の俺が先輩だと分かって、それまで威勢がよかった村瀬さんは力が抜けたようにへなへなとその場に座り込んだ。
「…ごめん。驚いたよね? 隠すつもりなかったんだけど先輩後輩の話は面接には不必要な話だからあえて黙ってた」
「そう…だったんですか」
面接は公平でないといけないから。私情を挟んで決定したくない。
そう言うと村瀬さんは気が抜けたように笑った。
「…なんか…すごい」
「すごい?」
「西崎さんはセンスもあって仕事もできて人望も篤くて、考え方も自分にけっして甘くなくて、物事を多方面から捉えることができて…。
それに比べてあたしは…あたしは本当に…」
村瀬さんの瞳にみるみるうちに涙が盛り上がってくる。
「いつも誰かに頼ってばかりで、助けられてばかりで、結局自分1人で何にもできない。甘えてばかり」
村瀬さんは、本当はウチの面接を受けることが気が乗らなかったらしい。
理由はこれまでのバイトの結果がさんざんだったことから接客業は向かないと判断したんだそうだ。
だけど同じ学科の親友から、将来空間デザイナーになりたいなら接客はきちんと学んだほうがいいと言われた。
それを聞いてやる気が出たのに、いざ臨んだウチの面接で俺に今までの自分を厳しく批判された。