Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[前編]完
「…くれるの?」
「出世払いな?」
そう言って人の悪い笑みを浮かべると、傍らに立つ長身の人物はあたしの隣にどかっと腰を下ろした。
半袖のTシャツにゆったりしたカーゴパンツという作業しやすいラフな服装。
Tシャツの裾は肩まで捲りあげ、頭に白いタオルを巻きつけているこの人の名前は――…
福嶋隼人。
…そうなんだ。
4年前の面接のとき、お店の出入口でぶつかったのが最初の出会いだったあたしたちが、当時の面接で唯一採用された2人だったんだ。
あのとき、
仕事に対する姿勢が見るからに低く常識もまるでなさそうだった福嶋くんと、
どこへ行ったって仕事が長続きせず『根性もプライドも向上心もまるでない』と手厳しく西崎さんに批判されたあたしが、
あの面接で唯一採用された2人だった――。
“採用”という結果にある意味衝撃だったあたしたちは、あれから1年半ほどアルバイトを続け、同時期に正社員にしてもらってからは4年半ずっと西崎さんが店長を務める流川店に真面目に勤務し続けていた。
そして1ヶ月前に、あたしと福嶋くんは4年半勤めた流川店を巣立って、2人でこの真新しい新店舗に移ってきたんだ。
そんなあたしたちは4年半ずっと同期だったけど、明日から形式上は、福嶋くんはあたしの“部下”に、あたしは福嶋くんの“上司”ということになるんだ。