Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[前編]完
「はあぁ…あたしこれ以上出世したらドコ行けばいいわけ?」
本社?
ロンドン支社?
社長の椅子?
…ってロンドン支社なんかそもそもないし、社長の椅子とかありえないから。
「心配すんな。お前がこれ以上出世することなんか天地がひっくり返ってもないから」
バイトから店長まで上りつめた時点で、あたしにしてみればじゅうぶん天地がひっくり返ってるんですけど…
「…じゃぁ出世払いできない」
「細かいこといちいち気にしてないで素直に礼のひとつでも言ってとっとと食え。
誰かさんがサボってたおかげで仕事が滞りまくってんだよ。
このままじゃ夜中までかかる」
ゲンナリしながらため息をつく福嶋くん。
誰かさんがサボってたおかげ…って。
それ間違いなく……あたしのことだよね?
恐る恐る福嶋くんを見るとギロっと睨まれた。
…ゔ。
「…ごめん…なさい」
「…ったく、しっかりしろよな」
「…はぃ……気をつけます」
項垂れるあたしに盛大なため息をつくと、福嶋くんは頭に巻いていたタオルを取った。
くしゃくしゃと髪を無造作に梳く。
花の匂いがほのかにまじった春風が、福嶋くんのお洒落なアシンメトリーの黒髪をちいさく揺らした。
西崎さん。
柏田さん。
福嶋くん。
この3人の中で、最初に会ったときよりもいちばん見た目的にガラリと印象が変わったのは…
いまあたしの隣にいる、この福嶋くんだろう―――…