Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[前編]完
「痛゙っ゙――…おまっ足踏むなよっ!!!」
「お前の問題発言は体に言って聞かせないとな」
「どこが問題発言なんだよ〜」
「村瀬のくだり全部だな。今までそういう目線で部下を見ていたとなると大問題だ。本社に報告してしかるべき処遇を…」
引き出しを開けて報告書を出そうとすると、
「分ーーーった!! 分かったから!! 不倫したいとかもう言わないから! 頼むから!! オレもう28だし、この不況下で再就職とか学も技術もないし無理だから!! それに家族だって養ってかなきゃならないし!!」
必死な形相で柏田が詰め寄ってきた。
「おまえは俺たち家族を路頭に迷わすのか? おまえの心にはシベリアの風でも吹いてんのか? なぁ頼むよ、西崎!!」
いつになく真剣な顔の柏田。
だけど…
…プッ……ダメだ。
柏田のこの表情、普段から慣れてないから10秒も持たない。
「なあ西崎。頼む、この通りだ!」
俺の足に縋りつき手を合わせる柏田。
だけど…
…ブブッ…やっぱダメだ…まともに見れない。
「西崎、オレとお前の仲じゃな――」
「…プッ…ぶわはははは…!!
も…ダメだっ……ははははは!!」
「おい、何が可笑しいんだよ!」
「や…悪い。…ブブッ……ははははは!」
やっぱ無理だ。
コイツ真面目な顔すると“ひょっとこ”そっくりになるんだよな。
…ダメだ、完全にツボった。
腹を抱えて笑ったのは久々な気がする――