Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[前編]完
「つーか言っとくけど、昨日は急きょ代役だったんだからな、俺」
「代役?」
「…ああ」
福嶋くんはタバコをくわえて火をつける。
「高校のときの先輩がさ、出張ホストやってんだよ。
昨日の相手はいわゆるその先輩の上客みたいなもんで、予約がもともと入ってたんだけど、直前になって先輩が不注意で階段から足を滑らして捻挫してさ、全治2週間。
…で、キャンセルする理由にしてはカッコ悪いし、同業の仲間に代わって次から仕事取られたら癪だからって、おまえ代わりに行って何とか理由つけてごまかしといてくれないかって頼まれて…」
そこまで話し終えると、はあ…と福嶋くんは疲れきった表情でタバコの煙を吐いた。
「…初めてだし」
「え?」
「こーゆーの。初めてやったっつーの」
タバコをくわえながら弱ったようにくしゃっと頭を掻く福嶋くん。
「…そう、なんだ」
…なんか意外。
福嶋くんってけっこう私生活が謎な人だけど
てっきりそういう分野には明るいんだと思ってた。
だから出張ホストといってもバリバリホストみたいな格好しなくてもいいのに、それを知らなくてホストらしい格好で出向いてしまったんだそうだ。
それを相手の女性に笑われてしまったらしい。