Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[前編]完
村瀬は専門学校の卒業旅行で友人とイタリアに行っていた。
そのとき家具の買い付けのため日程が偶然一緒だった在原さんと、初日に食事をした際にベルナルドと会ったんだそうだ。
その後の日程はベルナルドがイタリア観光を買って出てくれて、とても思い出深い卒業旅行になったと言っていた。
ベルナルドとはそれ以来約3年ぶりに会うらしい。
「Buona sera!」
はたとベルナルドと目が合った俺は何か話しかけられた。
ボナセーラ…?
困惑していると『こんばんはです』と宮下が教えてくれた。
こんばんは?
まだ明るいから『こんにちは』じゃねーの?
と聞くとイタリアではまだ明るい夕方からでも『こんばんは』と言うんだそうだ。
そうなのか…
「ボ…ボナセーラ」
俺が挨拶を返すと、ベルナルドは宮下に何かしゃべりかけて訊いている。
どうせ俺のことだろう。
宮下のヤツ、どうせろくなこと言わないだろうな。
思いっきり睨みをきかせていると、いきなりベルナルドがオーバーに驚いた。
な、何だ?
「Piacere!」
ぴ、ぴあちぇーれ?
意味の通じないイタリア語に困惑していると、村瀬がそっと教えてくれた。
「はじめましてって言ってるんだよ? Piacere mio って言ってみて」
「ピ、ピアチェーレ …ミオ」
村瀬の言うとおりに言うと、ベルナルドはさらにハイテンションでペラペラと話しかけてきた。
だから俺はにわか仕込みでさっぱりイタリア語わかんねーんだってば!