Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[前編]完
「ミカはどうしてあたしに接客業ばかり勧めるの?」
思い返してみると、これまでダメだったお店はほとんどが接客業だった。
たしかに学生にとっては敷居が低くて何の技術も資格もいらないけど、そう言えばミカはいつの間にか接客業以外の仕事をあたしに勧めなくなったんだよね。
これだけ全滅に近い結果を残している接客業なのに、完全にあたしには向いてない仕事だって分かっているのに、あえてまたトライさせようとするのはどうしてなんだろう?
「綾乃さぁ…何のためにわざわざ専門学校きて空間デザインの勉強してんの?」
ミカが頭を抱えながら訊いてくる。
「な、何のためって」
「趣味? 暇つぶし?」
「そ、そうじゃないけど…」
「ウチら将来、空間デザイナーになるために勉強してんでしょ?」
「ぅ、うん…。なる。なりたい!」
「だったら接客くらいできなきゃ。
いくらデザインのセンスがあっても人を相手にする仕事だよ?
接客ひとつ満足にできなくてどうすんの?
自分のセンスと腕をクライアントに信用してもらうためには接客は不可欠。
どこの世界に電話1本で打ち合わせもなしに契約してくれる人がいるの?
クライアントはデザイナーの腕が確かなのはもちろん、じかに本人に会って人間性を確かめた上で『この人に任せたい』そう思うのよ?
センスや腕なんか二の次なんだからね?」
「・・・・・・」
思わず言葉を失った。
…そっか。
「目から鱗かも。」
「ハァ…。カンベンしてよね」