Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[前編]完
「本当は思いきって投げ捨ててやりたいけど…、今後のことを考えてお金に変えようと思うの」
こうして過去の自分に踏ん切りをつけて新たな人生をスタートさせる。
ユリカさんの手のなかで太陽に反射してキラキラと輝く指輪は、まるでユリカさんのこれからの人生を象徴しているかのように見えた。
――今度こそ本当の幸せをつかめるといいな。
「…生まれたときからお金には困らない生活をさせてもらっていたけど、私は温度を持たないお金や貴金属より、ささやかでいい心がほんわかと温まる生活がしたかった。心の底から笑い合える温かな家族が欲しかった」
ユリカさんは吹っ切れたように手のなかの指輪をハンカチに包んでバッグにしまう。
「…ねぇ、どんなに頑張ったって手に入らないものがある。
――あなた私にそう言ったわよね?」
福嶋くんを見つめるユリカさん。
――どんなに頑張ったって手に入らないものがある?
「あの時の私はあなたと同意見だった。
けれど今の私はそうは思わないの。
努力はいつか必ず報われる。頑張れば頑張った分、欲しかったものはこの手にちゃんと収めることができる。少なくとも今の私はそう信じてる。
だから…どんなに頑張ったって手に入らないなんて決めつけないで、あなたもどうしても手に入れたいものがあるなら努力を続けてほしい。そして…」
…え? 何?
いま一瞬ユリカさんがあたしのことを見て微笑ったような…?
「そして、努力が実る日がいつかきっと訪れることを祈ってる。
…ありがとう。あなたたちに出会えてよかった――…」