Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[前編]完
――YBS証券 本社ビル
バタンっ…
車を路肩に停めて慌ただしくビルの入口へ向かう。
思ったとおりビルは真っ暗で入口は固く閉ざされていた。
「…菜月」
――アイツどこ行った?
先にタクシーに乗って向かっていたはずの菜月の姿がどこにもない。
キョロキョロと暗闇のなか目を凝らすと…
いた――…
ビルの脇のちいさな噴水の淵にちょこんと座っていた菜月。
悄然と肩を落としている姿は、心なしかさっき会った時よりも一回り小さくなった気がする。
「――菜月」
ゆっくり歩み寄って声をかけると、街灯の光にほのかに照らされた菜月の瞳が大きく見開かれる。
「…慧ちゃん」
俺を見上げる瞳には微かにキラリと光るものが浮かんでいた。