Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[前編]完



「――ぅわー……ぅわあ……ひぁあ…すご…」



「…菜月」



「…ぁららら…」



「菜月やめろって」



「慧ちゃんもこっち来て聞いてみなって? 隣のカップルすっっっごい激しいから」



壁に耳を押しつけながら手招きする菜月は、俺の咎める声に一切聞く耳持たない。



…ったく中学生か!っつーの。



最初に聞いた時は不快感をあらわにしていたくせに、菜月はすっかり隣の部屋の秘め事に興味津々になっている。



「調子よくなったんなら帰るぞ」



「えーー」



帰り支度を整える俺に菜月はブーイング。



「…はぁ……ヒトの盗み聞きして何が面白いんだよ」



「え…ヒトのだから面白いんじゃん。こういう機会って滅多にお耳にかかれないし♪」



「…アホらし。俺帰るからお前タクシー拾って帰れ」



「えっ…ちょっ! 待ってよ慧ちゃんっ…」



――ぐいっ



追いすがる菜月に不意をつかれて後ろから腕を引っ張られる。



「!」



あっと思ったときには、踏み出した足は床に着地することなく宙を蹴り上げ、軸足は後ろ向きにたたらを踏んでいた。





< 367 / 501 >

この作品をシェア

pagetop