Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[前編]完
絡み合ったままの視線を先に逸らし、身体を起こそうと踏ん張っていた両腕を持ち上げる。
すると視界の端に菜月の切なげな瞳を捕らえた。
と同時に白くしなやかな腕が首に絡みつく。
「菜…月」
ふわりと、唐突に顎先をくすぐった菜月のやわらかい髪。
「……っ…」
首筋にチクッと痛みが走った。
―――!?
弾かれたように上半身を起こした俺の首から菜月の腕がするりと滑り落ちる。
「お前何やっ…!」
菜月の身体に跨がったまま張り上げた抗議の声は、最後まで口にすることなく腹のなかに沈んだ。
「……菜月」
菜月は腕で両目を覆い隠して小さくしゃくり上げていた。
「…だっ…て…
……だって慧ちゃん……
あれから…
どれだけ月日が流れても……
一向にアタシを見てくれない…っ…」
「……」
「慧ちゃんの目に映ってるのは……
いつだってお姉ちゃんばかり―――…!」