Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[前編]完



「…その人は、この木を、名前のとおり、幸せになりたいからという理由で大切に大切に育てていた。

…だけど、……幸せにはなれなかった」



「……」



「…結局、こういうものに縋りつかなきゃいけないほど人間って弱い生き物なんだよ。誰も強い精神力なんて持ち合わせていない。

一時の気休めでも自分の苦しみがちょっとでも解放されるならそれに縋りつく。たとえそれが非科学的なものであっても。

人間は誰しも不幸になりたいなんて望んでる奴はいないんだから」



西崎さんは遠い目をしながらそう呟いた。



哀しげな西崎さんの横顔を見て、ぎゅっと胸が締めつけられる。





――誰のことを言っているのか、分かってしまった。





あたしなんて入る余地もないほど、今もなお西崎さんの心を埋め尽くしている人。







幸福の木の向こうに


西崎さんはいつも


あなたを見ているのかな――?










――ねぇ、優花さん?







あたしじゃダメですか?







あなたの代わりに西崎さんのそばにいちゃダメですか?







あたしじゃ西崎さんのそばにいる資格はありませんか――?










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