Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[前編]完
「――871円のお返しになります。ありがとうございましたー」
ショッピング袋を小脇に抱えて店を出、駐車場のブロック塀に腰かけていた村瀬のもとに行く。
「ちょっと来い」
「えっ…」
相変わらず“この世の終わり”みたいな暗い顔をしている村瀬の腕を強引に引いて、ある場所に向かった。
「大人2名」
「え、ちょっ…」
「1000円になります」
「ちょっ…福嶋くんっ?」
「1周10分半の空中散歩の旅へようこそ。ゆっくり楽しんでいって下さい♪」
受付のねーちゃんの営業スマイルに見送られ、村瀬の手を引いてビタミンカラーのゴンドラの1つに乗り込んだ。
「…何で?」
村瀬がふて腐れたような顔で訊いてくる。
「あ?」
「…何でこんなこと」
「別に。ただお前1回も乗ったことねぇだろうなって思って。こんな近くにあるのに」
「……」
村瀬は口をつぐんでふいと窓の外に目を向けた。
ゆっくりと上昇するゴンドラの窓の向こうにやがて見慣れた建物が見えてくる。