Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[前編]完
「わぁ♪ 夜景すごい綺麗〜! きゃーヒト小っちゃ〜い♪」
きゃっきゃっ言って窓の外を見下ろしている村瀬。
「あんまりはしゃぐなよ。ちぎれてズドーンって落ちるから」
「え…」
真に受けて笑みも動作も凍りつかせる村瀬。
…ブッ…面白ぇ。
堪えきれずに噴き出すと、からかったのがバレて殴られた。
――1周10分半の空中散歩の旅。
オープンして2ヶ月、
同じ商業施設内で働いていながらずっと乗る機会のなかった観覧車。
まぁ観覧車なんて大体が親子連れか恋人同士の乗り物だしな、
寂しい独り身にはほとんど乗る機会なんてないよな。
流川店を巣立って、完成したばかりの真新しい新店舗に初めてやってきたとき、
村瀬はこれから自分が任される新店舗より同じ商業施設内につくられた巨大な観覧車にいちばんに目を奪われていた。
仕事の合間に新鮮な空気を吸いに店の裏口から外に出て、そこからいつも眩しそうに観覧車を見上げていたっけ。
――いつか乗ってみたい。
口には出さなかったけど…
そう思ってるのは誰が見てもバレバレだった。