Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[前編]完
「…何言われた? 西崎さんに」
怖いくらい静かな声で問われ、
「え…?」
と思わず聞き逃したみたいな反応を返してしまう。
「だからさっき西崎さんに…」
「え、あ、うん、えっとね」
煩わしげな福嶋くんに気圧され、ぺらぺらと、つとめて明るく電話の内容を話した。
斉木さんは西崎さんを心配して訪れただけであって、2人は変に勘繰るような間柄じゃないってこと。
話を聞き終えた福嶋くんは1つ大きなため息をついた。
「…じゃー何で泣く?」
「え…あ」
あたしはそこで初めて頬を濡らしていた涙をぬぐった。
「誤解がとけたんだろ? 何で泣く必要がある?」
福嶋くんの鋭い眼差しに射竦められ、あたしは蛇に睨まれた蛙みたいに身を固くした。
うぅ…
下手したら心のなかに土足で入ってきそうなくらい。
それくらい福嶋くんの眼力には威力がある。
観念して口を割ってしまいそうになるけど…
でも、福嶋くんには優花さんのこと話せないよ。
だって優花さんは西崎さんにとって大切な大切な人。
優花さんとの思い出はどんなに辛く悲しいものでもかけがえのない思い出のはずだから。
だからそれをあんまりぺらぺらと他人に喋りたくない。
本当は、あたしにだって知る権利のないことだから――…