Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[前編]完
「…な、何でもないよ? またちょっと卑屈になってただけ」
それは本当のことだから。
「へへっ…あたしってダメだね。せっかく福嶋くんが励ましてくれたのに。ぜんぜん自分に自信が持てない。ははっ…」
何とか平静を装い、乾いた笑いとともに笑顔で言ってみた。
うまくはぐらかすことができたかどうか分からないけど
福嶋くんは何にも言わずに肩をつかんでいた手をどかしてくれた。
よかった…これ以上突っ込まれなくて。
だけど福嶋くんって結構鋭いからなぁ…
侮れないっていうかごまかしがきかないっていうか…
何か感づいてなきゃいいけど…
何はともあれ引き下がってくれたことにひそかに安堵していると、
「わわっ! ちょっ…ちょっと! 何すんのっ」
すっかり油断していたせいか、
奇襲みたいな早業で福嶋くんの車の助手席にあっさり身体を押し込められた。
「えっ、ななな何? 何なのっ?」
訳が分からず呆然としていると福嶋くんが運転席に乗り込んできて車を急発進させる。
「…え、ちょっ…ドコ行くのっ? もう10時過ぎてるよ! 明日も仕事だよ! やだっ…降ろしてよ!!」
喚き散らすあたしをよそに、福嶋くんは前を向いて運転に集中したまま、その涼しげな表情を崩さない。
もう何なの?
ドコに連れてくの――?